☆「見果てぬ夢」 桜の淡い季節が終わり、ハイネの詩にある
“ Im wunderschönen Monat Mai ”
今年も新緑の勢いを感じる季節となりました。 2003年3月に始めました「新・歌物語」も遂に第10回目を迎える事となりました。
今回はいよいよオーケストラとの共演です。歌曲の世界も後期ロマン派になると歌と管弦楽という壮大なスケールをもつ歌曲が現れてきました。20世紀にテレビがオール・カラー(総天然色)になった時と同じように、人々は一気に彩りがまし驚いたものです。 今回のこの管弦楽伴奏の歌曲によるリサイタルというのは日本初となるもので、またNHK交響楽団、沼尻氏ともにこのようなリサイタルで演奏するというのも初という、これはまさに一世一代の大舞台を超えてしまい、この大それた企画に甚だ緊張と責任を感じる次第です。 『夢』 「***になったら・・・・しよう!」 人にはいろんな夢があります。そんな事を考えた事のなかった僕ですが、南谷さんに出会ったのは、またそのお申し入れ、そしてこの企画を始める事ができたのは、僕にとりましては「夢」ではなく、『夢のような事』でした。 全て光栄な事と思っております。 奇しくもマーラー148回目の誕生日7月7日の前日。
7月6日の午後、皆様にサントリーホールにお越し頂く事を心よりお願いいたします。 Im
wunderschönen Monat Mai , 2008
☆「和の世界」
これまでドイツ・ロマン派の作曲家の創った歌曲を中心に進めてきたこのシリーズも、
「歌物語vol.9 和の世界」として日本の歌を取り上げることに致しました。
今回のプログラムは、山田耕筰により新たな魅力を得たといえる滝廉太郎の「荒城の
月」に始まり、この百年の「日本の歌曲」の歴史を辿ってみました。
とかく日本語の歌は歌い難いと、我々、歌を学ぶ者のあいだでは言われています。
日本語の発音と、西洋音楽の旋律・フレーズというものが合致しにくいと言うことから
でしょう。
しかし日本人が作曲した「日本語」の音楽、「言葉」あっての音楽です。
歌は、その言葉と作曲家達が作り上げたメロディーと、ハーモニーにより表現しよう
とした芸術です。
「荒城の月」、「赤とんぼ」、「この道」と言った曲は以前は教科書にあり、皆が口ずさ
んだ歌です。最近は歌われる機会も少なくなってきました。
これらの曲も、我々にとっては一つ一つがベートーヴェンやシューベルトたちの歌に
負けない素晴らしい芸術歌曲です。またそういう気概で創られた曲です。
もう一度その心を感じてみたいと思っています。
ピアノは、この度発売されますCD「この道〜ふるさとの歌」を昨年夏、山梨で一緒に
収録いたしました浅野真弓さんです。
そして山野安珠美さんの箏で、彼女の師である沢井忠夫さんの曲「ゆれる秋」を歌い
ます。
和の響きを味わっていただければ思います。
2008年 正月
☆「シラーの世界」によせて 「新・歌物語vol.8」 は「シラーの世界」と題して、シューベルトがシラーの
42の詩に曲をつけたものから7曲を選び取り上げます。
今回のプログラムにあります「歓喜の歌」(An die Freude )は、皆さんよく
ご存知のベートーヴェンの交響曲第九番の第4楽章の歌詞です。
同じ詩にシューベルトがメロディーをつけたものを歌います。
また、今回は長大な歌曲(バラード)を歌います。これらは劇作家としてのシラー
の詩の力を発揮されたもので、ドイツ歌曲が詩を「朗読する」ということから始ま
った事を知るに相応しい曲です。そしてこれはまさに日本の浄瑠璃等に通じる
「語りの芸術」です。
美しいメロディーだけでない歌の力を味わって頂ければと思います。
今回歌います曲の一部は一昨年、獨協大学主催 - 日本におけるドイツ年-「獨協
におけるドイツ年」シラー没後200年記念講演会・コンサートで歌いました。
あまり演奏会に取り上げられない曲ばかりです。後半は一曲で30分近くになります。
「新・歌物語」で取り上げようと思いました。
その折に渡部重美先生の訳に出会いました。その訳の自然な流れと力強い響きに
感激しました。
歌う機会があれば是非使わせて頂きたいと思いました。
今回、渡部先生にお尋ねしたところ、快諾してくださいました。
その上今回歌います曲を全て先生のお言葉に甘えて使わせていただくことに致しました。
この訳から「シラーの世界」、「シラーの響き」をお楽しみください。
弥生 初雪の降った日
☆「冬」に思う
「旅」とは特別なもの。
車窓から見る雪景色はまた格別な気持ちにしてくれます。
1985年11月9日夜、ミュンヘンに雪が降った。
その雪が僕の新しい「冬」との出会いでした。
一夜明けた朝は晴れ。英国庭園は一面の白い世界となり、その
真新しい白い絨毯の上に、色とりどりの落ち葉が落ちて輝いて
いました。
雪の上を歩くと、キュッ、キュッ、と音がしました。
その音も周りの音とは違い、心に響いてきました。
大きな木に葉っぱが一枚残っているのを見つけたら・・・・
あたはどうされますか?
僕はきっとその一枚の葉に想いをこめるでしょう。
そっと願いをこめてしまいます。
今から二十年も前のお話。
これから歌う歌は、冬に「咲いた花を見た」というと、人々が
笑う時代のお話です。
他の歌曲集はたいてい色鮮やかな情景が思い浮かべられます。
「遙かな恋人によす」、「水車屋の娘」、そして「詩人の恋」など
思いつくもの全て。
「冬の旅」という曲集、何とストイックな歌曲なのでしょうか?
聴いて下さった方々が、どういう想いで会場を後にされるので
しょうか?
「白」と「黒」による濃淡の世界。
自分の中にある感情の起伏を削ぎ落とし・・・・・
動きを押さえることにより広がりを表現する。
「アンコール」もありません。
今回は皆様にどんな思いで上野を後にしていただけるでしょうか?
1月寒い夜
☆「冬の旅」
今年は暑い夏を感ずる間もなく過ぎていった気がします。5、6月には昨年の「ラ・ボエーム」に
続いて新国でのオペラ「フィデリオ」。9月にはチューリヒで8年ぶりのパパゲーノ。そしてこの度
のバレエの公演「カルミナ・ブラーナ」の踊りと一緒の歌と続き、音楽と動き、身体を使った表現
を改めて感じる年となりました。その中で今までと違ったスケール、空間、大きさを感じてきまし
た。歳を重ねることによる経験の蓄積によるものなのか、肉体の変化によるものか、それは解りません。ある意味では新たな表現なのかもしれません。
南谷さんのご支援により始めることができたこの企画、「新・歌物語」も後半の第6回目を迎えるこ
ととなりました。久しぶりの「冬の旅」です。
いつもチラシのデザインをしてくれている高橋君はこの秋よりパリに移り住むことになり、遠隔地
とのやりとりとなりました。彼との出会いは2001年にカザルスホールで行った「冬の旅」の時で
す。マネージャーの吉岡さんとチラシのデザイナーを誰にしようかと、話し合っている時に僕が出
した条件は「シンプルなものを作ってくれる人」、でした。
それから演奏会ごとに彼と相談しながら進めていくのですが、彼のイメージ作りに音源を渡したり、
言葉で説明したり。そしていつも僕が言うことは「表はできるだけ文字を少なく、そしてシンプル
に!」でした。いつもそれに応えてくれるのが彼でした。今回、僕が彼に伝えたのは「冬」、「夜」、
「孤独」、「絶望」、「想い出」。そう、二度と戻ることのない「想い出」でした。「死」のイメ
ージはあまりださずに行くことも・・・・。
今回のピアニストは「白鳥の歌」、「水車屋の娘」とシューベルトの歌曲をご一緒した野平一郎さんです。
新たなる「冬の旅」を、2006年のシューベルトの誕生日の夜に歌おうと思います。
きっと寒い夜となると思います。
お忙しいこととは存じますが、ご来場を心よりお待ち申しあげております。
11月15日
追伸:
・当日、開演時間は予告では19時ですが、19時15分頃を予定しています。
・これまでの演奏会のチラシはホームページのLiedのコーナーで見ることができます。
☆ お知らせ
美術雑誌の「アート・トップ」10/11月号 Vol.206 に陶芸家の杉浦康
益さんとの対談が掲載されました。
☆「カルミナ・ブラーナ」を終えて
6回の「カルミナ・ブラーナ」の公演が終わって一週間。
練習を含め二週間の間、ほぼ毎日歌っていたことになる。こんなに「カルミナ」を歌うこともないだろう。頭の中で響いていた「O Fortuna, velut Luna!」という合唱の歌声もようやく消えた。
舞台上の踊りは見えないが、その緊張と熱気はいつも感じられた。彼らが自然な動きで踊れるように細心の注意を払いながら歌った、と言えるだろう。歌い手の勝手で歌えないということだ。それ故、普通の演奏以上に責任が大きかった。
今回はオーケストラ・ピットという特殊な場所で歌うことになった。
6月に同じ新国の公演「フィデリオ」も音響という意味では特殊(特殊な空間)だった。
第一幕からずーっと舞台の前面、恐らく舞台の四分の一くらいの前面の場所だけで物語は進む。その舞台とは半円を描くように囲んだ大きな壁と、その中央にそそり立つ18トンもの巨大な柱が反響板の役目を果たしていた。歌い手は反響板を背負って歌っているようなものだった。それが合唱と僕が登場するフィナーレはその反響板である大きな柱が急になくなり、奥行きと高さのある舞台全面を使った大きな空間となる。恐らく会場にいらしたお客さんはそれまでの音響空間との違いを感じられていたことであろう。特殊な空間、音響空間を、あの大きな柱が作り出したということになる。
今回のオケピでは当初より音響面の問題、不安を誰もが考えたことだろう。
あの狭いピット。その中に70人近いオーケストラのメンバー、そして合唱団の60名と我々3名が入っているのだから。特に僕の後ろの合唱団は舞台の下に潜り込んだ、奥まった狭いところ、そこから歌うのである。
そして僕の頭の前面と後頭部側とには実際、温度差があった。そして熱気と共に後頭部を打つ勢いの合唱団の方々のパワフルで素晴らしい歌声。
あれでパワー不足とおっしゃる?!もし舞台上で歌っていたら・・・・・・
よく演奏会場で「聴こえる、聴こえない」ということを言われる方がいる。
どんなに素晴らしいホールでも、全ての席が同じように聴こえると言うことはありえない。ましてやCDの演奏のように聴こえることはあり得ない。
あの狭くて特殊な場所でずーっと歌いきった合唱団の皆さん、ご苦労様でした。素晴らしかったです!
ダンサーの方々、ありがとうございました。楽しかったです。
一番残念だったのは、舞台上の皆さんの踊りを観ることができなかったことです。
11月14日
☆新国立劇場「カルミナ・ブラーナ」
「カルミナ・ブラーナ」の初日が開いた。
新国で初めてバレエの公演にオペラ部門が共演するという形で行われた。我々はまさに「縁の下の力持ち」、オケピ(オーケストラ・ピット)からのサポート。リハーサルの折何度か観ることができた。とにかく面白い、そして綺麗だ、そして美しいと思う。その証拠に今日の公演を観た後、チケットサービスに新たにチケットを求める人の列ができたのだ。劇場関係者も大喜び。
一階席で観ても、上の席で観ても楽しめる。上の席からだと、ダンサーのフォーメーションも楽しめるし、美しい照明が印象的。まるで万華鏡でも観ているようであった。
さて、肝心の我々音楽スタッフだ。迫力満点の合唱団。ソプラノは佐藤美枝子さんが美しい声を披露してくれる。そして十年ぶりの再会のブライアンが艶やかなカウンターテナーの響きで歌ってくれる。
当初はオーケストラ・ピットの中で歌うために音響が心配された。ステージ上で歌うのと同じようには行かないが、舞台上の踊りと共に楽しんでもらいたい。
我々は残念ながら舞台上の彼らの踊りを本番中は観ることができない。ただ彼らの踊りの邪魔にならないように、というかできるだけ自然な動きができるように、要するに歌も自然に聞こえる様に歌えばいいのだ。
前半の「ライモンダ」は伝統的なバレエの美しさを見せてくれる。
本当に多くの人に観てもらいたい公演である。
10月29日
☆美しい五月に
今年は久しぶりに桜の花の美しさを楽しむことができました。そして今、新緑の美しさがいっそう「生命の力強さ」を感じさせてくれる気がします。
<新・歌物語 Vol.5>は「ブラームスの世界」として、その音楽に生命の力強さを強く感じる作曲家、ブラームスを取り上げます。
彼の最晩年の曲「四つの厳粛な歌」は、遺された手紙に「これは今日、私の誕生日にあたって自分自身に贈った」とあるように彼の音楽的遺言といえる作品です。
その他に素朴な民謡のメロディーを愛したブラームスの代表的な歌曲、そして今回のパートナー、リヒター先生の提案で、民謡のモティーフに作曲された晩年のピアノの名曲「三つのインテルメッツィ」をプログラムに入れてみました。
昨年暮「バッハのカンタータ」の時の宮本文昭さんの指の怪我、そして今年二月の「もう一つの歌物語」での僕のインフルエンザによる演奏不能とハプニングが続きました。つい先日のサントリー・ホールでの三澤洋史さん指揮による東響とのブラームス作曲「ドイツ・レクイエム」の演奏会が近づくにつれて、その悪夢がよみがえって来ました。演奏会は無事に終えることができました。また改めてブラームスの力を感じました。
これから新国立劇場の「フィデリオ」、そして6月末の大友直人さん+東響とのマーラー作曲「大地の歌」と続きますが、健康管理には一層の留意をいたす所存です。
初夏の土曜日の午後、上野の杜も青々とした緑の美しい頃と存じます。
ブラームスの音楽をお楽しみ頂ければ幸せです。
5月5日
☆二度目のお詫び
先日開きました「もう一つの歌物語」、インフルエンザで声が全く出ず、歌うことができませんでした。
二ヶ月前に文化会館小ホールの舞台で、宮本文昭さんがご挨拶をなさいましたが、まさか僕が二ヶ月後に同じ事をするとは全く想像していませんでした。
急遽、共演者の高橋薫子さんにお願いをいたしまして、演奏会をすべて引き受けて頂くことになりました。万全の体調でなかった彼女でしたが、快諾して頂きました。そして素敵な演奏会にしていただきました。高橋薫子さん、そしてピアノの瀧田亮子さんに心よりお礼申し上げます。
また、当日足をお運び頂きました皆様も、ご理解を頂けましたことにも重ねてお礼申し上げます。
歌い手として冬場は本当に危険なシーズンです。十分に気をつけているつもりでしたが、様々な方法をとってはみたのですが、今回はどうすることもできませんでした。
僕の歌い手の人生の中で2度目です。
「声は生もの」と思います。一日一日違ったコンディションです。その調整も勿論我々の大事な仕事です。あらためて心いたします。
また、前回の「バッハのカンタータ」の時に続きの出来事です。「二度あることは三度ある」、と言う風にならないように次回は気をつけます。
2月26日
☆「もう一つの歌物語」
一昨年の春からドイツ・ロマン派の音楽を中心にしたプログラムで、新たに「新・歌物語」と
して歌ってまいりました。
これまでの演奏会も皆様の温かいご支持によって、昨年十二月十日「バッハのカンタータの
夕べ」で四回目の演奏会を無事に終えることができました。
今回はこれまでの シリーズのテーマには入りませんが、馴染み深く、かつ僕が好きな曲、
「日本歌曲」や「イタリア古典歌曲」を取り上げてみました。
「イタリアの歌」といえば学生時代から、愛の歌の数々を熱くテノールが歌い上げているのを
嫉妬の眼差しで眺めていたものでした。
今日はテノールに負けじと入れてみました。
そして今回は高橋薫子さんという最高のパートナーをお迎えいたしました。
美しい耀きのある声で歌われる彼女の歌を僕も楽しみにしています。
「裏メニュー」とはいきませんが、「もう一つの歌物語」としてお聴き頂ければ幸せです。
2月8日
☆お詫びと御報告
「新・歌物語 バッハ・カンタータの夕べ」を終えて二週間が過ぎてしまいました。今回、共演予定であった宮本文昭さんが本番の二日前、8日午前中、リードの調整中に左
手指を怪我されました。演奏会で演奏することが不可能と判断。直ちに代役をと
言うこととなり、宮本さんのお弟子さんである荒絵里子さんに急遽代わりに演奏
して頂くことに致しました。代役を務めてくれた荒さんは今年の日本音楽コン
クールで一位になり、オーボエ界の期待の星です。彼女は本当に急な事にもかか
わらず立派に大役を果たして下さいました。
当日、聴きにお越し頂きました方々の暖かいご理解、心より感謝致します。また、この御報告が後れました事をお詫び申し上げます。
宮本さんとの共演、と言うことに関しましては大変残念なことでしたが、演奏者としては僕の身にも何時同じようなことがあるか判りません。またいつの日にか
実現できるようにと思っております。
宮本さんは二日間、我々のリハーサルにずーっと付き合って下さいました。今回の演奏会は宮本さんをはじめ、若い音楽家とともに創りあげることができたと思っています。僕が命名致した「アンサンブル・未来の巨匠」と時間を忘れて音楽を創りあげる作業ができたことは僕に取って本当に、演奏会と同じくらい楽しい時間でした。彼らの方が僕より少し若いのですが・・・・・・・。
そして今回は初めてこのような大勢の参加による演奏会を企画、また歌っていくという事をしました。指揮者も立てずに行いました。意思の疎通を含み練習の時間が大切なものでした。これまでのただ出かけて行き歌うという事とは全く違うものでした。
参加してくれたみんなに感謝しています。
明日は今年の歌い納めの「第九」です。
皆様よい年をお迎え下さい。
12月27日
☆「バッハ・カンタータの夕べ」に寄せて
ドイツを観光するに良い時はいつですか?と尋ねられたら、僕は迷わず「新緑の美しい五月か、クリスマス週間から新年にかけて」と答えるでしょう。クリスマスを迎えるために広場には市が立つし、町の通りや至る所では静かに、そして美しく飾られています。日も短いこともありますが、どことなく敬虔な気持ちにさせてくれます。
この12月10日、日本は師走の風の吹く時期ですが、ヨーロッパはちょうどそのクリスマス週間。
今回はバッハの宗教曲を歌います。僕がヨーロッパ、ドイツで魅せられた音楽の一つが宗教曲です。その多くが2つの聖書(旧約と新約)からの題材や、キリスト教の典礼文からテキストを取られています。しかしその内容は宗教曲というものにとどまらず、人間の人生、愛、そのものといえます。
ミュンヘン音楽大学の近くにある聖マルクス教会(St.Marcuskirche)はこの教会の音楽監督をカール・リヒターが務めていた一時代、ドイツの宗教音楽の中心地的役割を担っていました。僕はそのマルクス教会で彼の後継者のもと数多くの宗教曲を演奏会やミサの中で歌いました。ミサ曲、レクイエム、受難曲、オラトリオ、そして多くのカンタータです。
今回歌う56番と82番のカンタータは、バスのソロ・カンタータとして有名な曲です。
この二曲は、甘美なオーボエの響きとバスの織りなす音楽です。
以前からこのシリーズに取り入れたいと思っていたのですが、昨年、JTホールで宮本さんとご一緒して益々強いものになってきました。
今回宮本さんの美しい響きとどのように競演できるか、お楽しみ下さい。
また今回は、オルガンの鈴木優人君を中心にしたアンサンブルの若い音楽家と音楽を一緒に創っていけるのも僕にとっては大きな楽しみの一つです。
そして美しいメロディーの中、敬虔で厳かな時間を楽しんで頂ければと思います。
11月19日
☆「ラ・ボエーム」新国立劇場の公演を終えて
「ラ・ボエーム」の最終公演が終わって一月が経った。最終日は台風が首都圏を襲っていた。しかし我々が打ち上げを終えてオペラシティーの建物を出てみると、空には星が光っていた。
今年の日本の夏は猛暑であった。台風もあった。実家の瓦も台風で飛んでしまった。しかし今年の夏は僕にとって本当に新国立劇場に入り浸りであった。今シーズンのオープニングの公演、「カヴァレリア・ルスティカーナ/道化師」にカヴァーとして関わっていたために8月12日に練習が始まって以来、毎日朝から通っていた。あの巨大なコンクリートの建物の中に居ると時々その猛暑自体忘れてしまっていた。
新プロダクションは約4週間の練習期間が取られるが、今回の「ラ・ボエーム」のように再演ものは一週間である。キャストが揃うのが一週間前。今回は4日で仕上げて(一幕につき一日)、舞台稽古一回、ゲネプロ、そして二日空いて初日というものだった。
その短いリハーサルで「ある程度以上」の質に仕上げていくのである。我々歌い手にそれが求められている。
その上に忙しかった。個人的な話だがゲネプロ当日の朝は僕の学生が横浜で教育実習をしていて、その研究授業を二つ観て、それから初台に駆けつけた。
しかし本当に楽しくショナールをさせて頂いた。初めて歌う役で、動きが激しいし、内心最後まで心配していたが・・・・・。
裏方の演出部、衣装、メイク、ヘヤー等。そして音楽スタッフ、合唱団、助演の方々等、有り難う御座いました。
若々しく作って頂いて本当に感謝です。肉襦袢まで入れてしました。
楽しく、あっという間に終わってしまった。
男性4人組のうち僕以外はとにかく大きかった。でも、毎日彼らとも和気藹々とやっていた。久々のボヘミアン気分。
観に来て頂いた皆さんが楽しんで頂けたのでしたら、こんな嬉しいことはありません。
「劇場は生きている」、毎日、毎回緊張もありますが、毎回違うのである。それが楽しいのです。そしていろんな人で作り上げる。楽しいではありませんか!
終わってボーっとしていたら、一ヶ月が過ぎていった。
もう陽の暮れるのも早く、あの夏は・・・・・、と考えてしまいます。次はバッハです。
11月14日
☆「ラ・ボエーム」新国立劇場
04年のシーズン、新国立劇場のプッチーニ作曲「ラ・ボエーム」の公演が始まりました。
久しぶりのオペラです。今回初めて「ショナール役」を演じ(歌わ)させて頂ける事になりました。
今回は本当に限られた短い練習日程の中で動きの激しいオペラを仕上げるというものでした。その上、僕にとって初役ということもあり大変不安に思っていました。
昨日、無事に初日が開きました。
オペラはいろんな人と一緒にでき楽しい仕事です。
歌曲等のリサイタルとはまた違った楽しみ、喜びがあります。
ピアノで歌うとき、オーケストラをバックに歌うとき、それぞれ歌い方は違います。
勿論、作曲家や時代によっても歌い方は変わります。
オペラもそうです。楽しんでやらせて頂いています。今回もスタッフ、メンバーにも恵まれています。本当に感謝、です。
今回は全部で5公演。あと4回です。最後まで無事に大役が果たせますように祈るばかりです。
「生きている音楽」、「生きている劇場」を皆様に感じて頂ければと思います。
*なお、公演の模様は新国立劇場のホームページ(http://www.nntt.jac.go.jp/)の中にあります「公演記録」に写真が掲載されています。
また平成10年の「魔笛」の公演の写真も掲載されています。
2004年9月26日
☆「音楽の友 8月号」トークセッション ≪20世紀のスターたち≫
第32回 ”ヘルマン・プライ” (P122-125)
黒田恭一さん、浅里公三さんと先日お話を致しました。
スターを一人選んで話をするということで、僕はヘルマン・プライを選びました。
とても楽しい時間でした。僕のこれからの歌についても考えるチャンスとなりました。
いつも自分の歌を考えて辿り着くことですが・・・・・。(7月21日)
☆この度、「新・歌物語」Vol.3 を前にインターネットの音楽情報サイト「クラッシックニュース」のインタビューがありました。下記サイトでお聞き頂ければ幸いです。
=> classicNEWS
インタビュー
☆平成15年度芸術祭・優秀賞受賞 「KEYWORD 2003 今年度の芸術祭賞(朝日新聞)」
受賞理由(文化庁HP掲載)
河野克典 河野克典バリトンリサイタル「ヴォルフの世界」における歌唱
ドイツ・リートにおける後期ロマン派の最大の作曲家のひとりヴォルフの作品によるプログラムに
おいて、河野克典は洗練されたディクションと良く訓練された発声技術を駆使して、見事な歌唱を
聞かせた。ゲーテの詩による《竪琴弾きの歌》を、ヴォルフとシューベルトの同詞異曲で対比させる等、選曲も熟考されたものであったが、それが単なる知的遊びや衒学趣味に陥る事なく、作品の
魅力を聴衆に強く伝えた。賞賛に価する歌唱。
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この度、この秋におこなったリサイタル・シリーズ「新・歌物語 ヴォルフの世界」で賞を頂きました。
芸術祭の参加作品として取り上げられ、このように評価して頂きまして喜びでいっぱいです。
これはこれからの活動への励ましと思い、皆様に楽しんで頂ける歌をたくさん歌っていけるよう頑張るつもりです。
今年は1月に入ってすぐに読響&マエストロ・アルブレヒトとのマーラーのオーケストラ歌曲に始まり、都響&マエストロ・ベルティーニとの「ドイツ・レクイエム」、そして秋のマーラーの「さすらう若人の歌」。そして暮れはオーボエの宮本さんとの「バッハのカンタータ」、その他多くの方と共演できました。全てが僕にとって幸せな時間でした。
しかし極めつけは本番二日前の午後に入ってきたベルティーニ指揮の都響の定期公演ベルリオーズの「ロメオとジュリエット」ロレンツォ神父役のピンチヒッターかもしれません。もの凄く密度の高い時でした。
二枚の新しいCDも発売されました。新緑の美しいドイツでレコーディングもできました。
充実したと言うより、恵まれた年でした。
あらためまして応援頂きました方々、聴きに来て下さった方々に心より感謝致します。
本当にありがとうございました。
皆様にとりまして健康で実り多き年になりますよう、心よりお祈り致します。(12月26日)
☆ヴォルフの夕べに寄せて
フーゴー・ヴォルフは1860年にオーストリアに生まれました。マーラーと同じ年に生まれ、そして彼とウィーンで一緒に学んだ仲です。歌曲以外の曲を極端に書いていないため、音楽家の中でも馴染みの薄い作曲家の一人かもしれません。
しかし歌曲の世界、特にドイツ・リートではシューベルトと同じくらい、もしかするとそれ以上に彼の果たした役割は大きいかもしれません。シューマンが描き出した歌曲の中の色彩を、ヴォルフがよりいっそう豊かなものにしていったと言えると思います。
そのヴォルフは「イタリア歌曲集」「ゲーテ歌曲集」などと言った歌曲集を短い時間に作曲しました。
それは生き生きと鮮烈に、まさに魂がほとばしるように、命と引き替えのように・・・・
そして1903年にこの世を去りました。今年がちょうど百年の記念の年。
馴染みのない作曲家、そしてドイツ語ということで敬遠がちになることもあるとは存じます。
僕自身、初めはなんと難しい曲か、と思ったものです。それが今ではその魅力に魅せられてしまいました。
今回は、ヴォルフの歌曲の中でも馴染みやすいメロディーの多いドイツのロマン派の代表的な詩人メーリケの詩に音楽を付けた歌曲集からの曲を中心に、そして「ゲーテ歌曲集」の中から、シューベルト、シューマンも作曲した「竪琴弾きの歌」を、彼が対抗意識も燃やしたシューベルトの「竪琴弾きの歌」と並べてみました。
皆さんでお聴き比べるのも良いかと思います。
今回は、前回の演奏会の後、事前に歌詞を知りたいというお客様のご要望があったためあらかじめ当日歌います歌の大意をお送り、そしてホームページ上に掲載しております。
ヴォルフの歌曲の世界、色彩を味わって頂ければ幸いです。
多くの方に、このヴォルフの年に彼の音楽、歌曲にふれて頂きたいと思います。
☆クラシック音楽情報誌「ぶらあぼ・インターネット版」の「アーティストメール」
この度「ぶらあぼ」インターネット版の「アーティスト・メール」にエッセイを投稿することになりました。このホーム・ページの「モノローグ」とは、異なったタッチとテーマで書いていく予定です。
両コーナーともよろしくお願い致します。(2月18日)
ぶらあぼ
をクリックした後「webオリジナル」をクリックしてください。
☆≪リュッケルトの歌曲≫の第5曲目
今回、読響とのマーラーのオーケストラ歌曲演奏のチャンスは僕にとって本当に夢のようなものでした。おそらくこの曲、特に「リュッケルトの詩による歌曲」はあまり演奏される機会もないと思われます。しかし素晴らしい曲です。「綺麗なものには刺がある」と同じに「良い曲は難しい」と言うのも常ではありますが、その曲を今回歌わせて頂けることになった喜びは言い表しようがありませんでした。指揮者をはじめ読響の方々とも楽しい時間がもてた事も幸せでした。
さて、この5曲のうち第4曲まではマーラー自身の手によってオーケストレーションされています。そして第5曲目とされている≪Liebst du um Schoenheit (美しさゆえに愛するなら)≫は別の人のオーケストレーションでマーラー全集にも入っていません。また歌詞の内容が女性のものと言うことで、女性は歌うのですが男性の歌手が歌う事は普通ありません。
今回もそうした理由でプログラムに合わないと言うことで、指揮者のアルブレヒトさんがこの一曲をプログラムから外されました。手違いで当日のパンフレットに"演奏者の都合で”と書かれていましたので、演奏会の後、「どうして歌わなかったのですか?」と言う問いが多く、そのご質問にこの場を借りてお答え致します。(1月29日)
☆新年のご挨拶
新しい年を迎えるたびに、何か新しいショックをと昔から思っていました。
除夜の鐘が鳴り、新年を迎えると0時ちょうどに≪時間の壁≫、≪新年の壁≫が身体にぶつかってくる。そうなれば良いナと子供の頃より思っていました。そうすると新年の実感がもっと湧くと思うのですが。
そうこういっているうちに新しい年となりました。お正月早々、マエストロ・アルブレヒト、読売日本交響楽団との「マーラーのオーケストラ歌曲」です。
この「リュッケルト」をはじめこれらの曲は僕が、昔から歌いたかった曲です。もちろん「さすらう若人の歌」はこれまでも幾度もヨーロッパでも、日本のNHK交響楽団とも一緒に歌ってきました。
しかしやはり格別です。
今年はそのマーラーの歌曲を秋にはマエストロ・ベルティーニ&都響という組み合わせでも歌わせていただける事となりました。
この演奏会を含めて、楽しみにしています。
本当にこんなチャンスは歌い手の人生の中でも、そうあるものではないと思っています。
ですからその喜びは格別です。本当に幸せに思っています。
☆春から始める「新・歌物語」について
このたび「新・歌物語」という新しいリサイタルシーズを春より始める事となりました。先ず第一回として3月16日に東京文化会館・小ホールでリサイタルを開きます。
≪歌い手≫として最高の時期と言えるこの時間を、悔いなくより充実したものにしたいと考えておりました。僕が以前企画いたしました『歌物語』に聴衆の一人として聴きに来ていらしていた南谷さんのお申し出でとご後援により、今回『新・歌物語』という僕にとって夢のような企画がスタートすることになりました。
今回を第一回として、五年間に十回の演奏会を企画していきます。
カザルスホールで開いていました「歌物語」同様、歌曲の演奏も他の器楽の演奏と同じように、共演者・ピアニストとのアンサンブルによる演奏と言うモットーに基づいて行います。アンコールまでをフルコースのメニューと考え、僕がこれまで歌い続けてきたドイツ歌曲を中心に、日本の歌も含めて「お客様に是非聴いて頂きたい」様々な曲をプログラムに織り込んでいきたいと思っております。
第一回は、古典の作曲家を中心に取り上げました。モーツァルト、ベートーヴェン、そして、シューベルトと同じ年に生まれた作曲家レーヴェの歌曲から。
連作歌曲の先駆けとなったベートーヴェンの2つの組曲。そして昨年より世の中「お爺さんの古時計」がブームになっていますが、元祖「お爺さんの古時計」といえるレーヴェの「Die
Uhr」(時計)を是非聴いていただきたいと思います。
秋に行う第二回は、今年没後100年を迎えたフーゴー・ヴォルフの曲を中心に、彼に意欲を沸かせた作曲家の曲と共にプログラムを作ります。
十回の演奏会の中には、日本の歌曲、そしてオーケストラ伴奏の歌曲の夕べも企画いたします。
これからも聴きに来てくださる皆さんの五感に響き、心に残る歌を歌って行きたいと思っています。
何卒宜しくご声援の程お願いいたします。
2003年1月
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